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懸想文

国語講師 吉田裕子のエッセイ、歌舞伎観劇メモ、古典作品や長唄・端唄の現代語訳など

(自作短歌)行く末の心もとなさ分け持ちてただ寝汚く眠らるる冬

行く末の心もとなさ分け持ちてただ寝汚く眠らるる冬
(ゆくすえのこころもとなさわけもちてただいぎたなくねむらるるふゆ)


フリーランスになった1年目のころ、仕事といえば、夕方からの塾や家庭教師だけ。書き物の仕事も特にしていなかったので、(今思えば)毎日、時間を持て余していたのだと思う。

ちょうど、相手も同じような働き方をしていた時期だった。私たちはほぼ毎日飲みに行き、TSUTAYAで借りた『相棒』のDVDを観て、夜明け前に眠りにつき、昼過ぎまでダラダラと寝ていることが多かった。

当時、月々の支払いに困るようなことはなかったけれど、決して、「余裕がある」とは言えないくらいの暮らし向きだった。

そんな私には、その日 稼いだ金額と、その日 使った金額とを比べてみる癖があった。

私は食べていけるんだろうか。シンプルに経済的な意味で、将来への不安を抱えていた。

聞いてみたことはないけれど、向こうも同じようなことを感じていたと思う。

私たちは、ぼんやりとした不安を抱えながらも、それを解決するための具体的な行動を取るわけでもなく、ただただよく寝ていた。

数年経って、お互いに仕事が忙しくなって、すれ違うことも多くなった中では、むしろ羨ましい、若かりし日々。