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懸想文

国語講師 吉田裕子のエッセイ、歌舞伎観劇メモ、古典作品や長唄・端唄の現代語訳など

(自作短歌)世の中の溌剌とせる月曜の九時に風呂にて『智恵子抄』読む ~ フリーランス生活の恍惚と不安

 

智恵子抄 (280円文庫)

智恵子抄 (280円文庫)

 


世の中の溌剌とせる月曜の九時に風呂にて『智恵子抄』読む

(よのなかのはつらつとせるげつようのくじにふろにてちえこしょうよむ)
 
 
 
正社員を辞め、フリーになって、もう3年強になる。

正社員だった頃と比べ、時間に余裕のある時期もあれば、忙しくて仕方のない時期もある。経済的に苦しい月もあれば、そこそこの贅沢ができる月もある。「フリーって最高♪」と思うときもあれば、将来が不安で仕方なくなるときもある。

浮いたり、沈んだり、だ。
 
ただ、明らかなのは、少しずつ、フリーではなかった頃の感覚を忘れ始めていること。

正社員時代は職務上、「平日、毎日同じ時間に同じ場所に出社する」という生活ばかりではなかったけれど、確かに、2年くらいはそういう時期があった。正社員生活の最初の1年と最後の1年とがそうだった。平日の朝、満員電車に揺られ、出社していた。
 
今も、朝が早い日もある(むしろ、徹夜する日もある)。
でも、それは毎日ではない。

そして。

平日の朝、ダラダラしている時間こそが、「フリーって最高♪」と思う場合もあり、将来が不安で仕方なくなる場合もある時間なのだ。
 
特に、週末リフレッシュした人達が「さー、今週も頑張らなきゃ!」となっている月曜の朝にダラダラしているのは、背徳感が強い。

そんな朝には、俗世離れした何かを読みたくなる。
 
間違っても、『7つの習慣―成功には原則があった!』なんて読まないのだ。

 
私にはあなたがある
あなたがある
そしてあなたの内には大きな愛の世界があります
私は人から離れて孤独になりながら
あなたを通じて再び人類の生きた気息に接します
ヒユウマニテイの中に活躍します
すべてから脱却して
ただあなたに向ふのです
深いとほい人類の泉に肌をひたすのです
あなたは私の為めに生れたのだ
私にはあなたがある
あなたがある あなたがある

「人類の泉」から抜粋
 
智恵子は東京に空が無いといふ、
ほんとの空が見たいといふ。
私は驚いて空を見る。
桜若葉の間に在るのは、
切つても切れない
むかしなじみのきれいな空だ。
どんよりけむる地平のぼかしは
うすもも色の朝のしめりだ。
智恵子は遠くを見ながら言ふ。
阿多多羅山の山の上に
毎日出てゐる青い空が
智恵子のほんとの空だといふ。
あどけない空の話である。

「あどけない話」
 
尾長や千鳥が智恵子の友だち
もう人間であることをやめた智恵子に
恐ろしくきれいな朝の天空は絶好の遊歩場
智恵子飛ぶ

「風にのる智恵子」から抜粋 

 目の前の現実とはかけ離れた本の世界に酔いながら、私は自分の生き方を誇ったり、愛おしんだり、恨んだり、する。
 
智恵子紙絵 (ちくま文庫)

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