懸想文

国語講師 吉田裕子のエッセイ、歌舞伎観劇メモ、古典作品や長唄・端唄の現代語訳など

八月納涼歌舞伎(歌舞伎座) 第3部「芋掘長者」「祇園恋づくし」感想 中村勘九郎・七之助兄弟と坂東巳之助らが魅せる


夜の部1つ目の演目は、今年2月に亡くなった十世 坂東三津五郎さんが復活させた舞踊劇『芋掘長者(いもほりちょうじゃ)』。

芋掘藤五郎  橋之助
友達治六郎  巳之助
腰元松葉   新 悟
魁兵馬    国 生
菟原左内   鶴 松
松ヶ枝家後室 秀 調
緑御前      七之助

 

復活以来、主役の藤五郎を三津五郎さん、友達の治六郎を中村橋之助さんが演じてきたのですが、今回は、藤五郎さんを橋之助さんが引き継ぎました。昨年の納涼歌舞伎の際に、三津五郎さんに「1度、藤五郎をやってよ」と言われていたのだそうです。

狂言がかった雰囲気がほんわかして、楽しい演目でしたね。狙っていたお姫様を奪われても、醜く嫉妬したりしない兵馬と左内。大らかで、誰も不幸にならない演目。幸せで、良い。

 

大津屋次郎八/女房おつぎ  扇 雀
指物師留五郎        勘九郎
芸妓染香          七之助
手代文吉          巳之助
おつぎ妹おその       鶴 松
持丸屋女房おげん      歌女之丞
岩本楼女将お筆       高麗
持丸屋太兵衛        彌十郎 


続いて祇園恋づくし』。個性的な登場人物たちと、京都弁(と留五郎の江戸弁)が印象的な、娯楽性の高い演目です。

前回は、坂田藤十郎(当時は中村鴈治郎)さんと十八世 中村勘三郎(当時は中村勘九郎)さんという、西・東の名優の顔合わせでした。今回は、それぞれご子息が受け継がれる形で上演されています。

さっきの演目では、人形のような可愛らしい赤姫を演じていた七之助さんが一転、男を手玉に取る芸妓を演じます(笑)

そして、べらんめえ調でしゃべる中村勘九郎さんの留五郎は一体どこまでが台本で、どこからが即興なのか。

  • 「俺はそそっかしくて、せっかちなの。……親に似て!」
  • 「みんな京都に来たがるよ。『そうだ、京都行こう』ってね」
  • 「よっ、成駒家(なりこまや)!」

などなど、お客さんを沸かせる楽しいアドリブに満ちていました。

坂東巳之助さんの手代文吉も、面白かったですねぇ……! 初登場のときから「あれ、声がいつもと違う?」と思ったのですが、中盤の、あの、ちょっと(相当?)気持ち悪いキャラクター!!

勘三郎さん、三津五郎さん、お二人のご子息たちは、とても元気です。

 

そういえば、この演目の中で中村扇雀さんが印象的なアドリブを……。

 

そんな納涼歌舞伎は、時間も18:15~ですし、時間が短いので、チケットも少しお安め。とっても楽しくて、歌舞伎初見でも楽しめる(イヤホンガイドも無くて大丈夫だと思われる)ので、是非お運びになってはいかがでしょう?