懸想文

国語講師 吉田裕子のエッセイ、歌舞伎観劇メモ、古典作品や長唄・端唄の現代語訳など

『伽羅先代萩』@秀山祭九月大歌舞伎(歌舞伎座 夜の部)の感想 ~めいぼくせんだいはぎ~

9/4(金)、歌舞伎座 夜の部に行ってまいりました。今月の夜の部は、仙台藩 伊達家のお家騒動に基づいて作られた『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』。

最上級の香木「伽羅(きゃら)」を「めいぼく(銘木)」と読ませ、「先代」に「仙台」をかけている、歌舞伎らしい名前の演目です。


伽羅先代萩 | 歌舞伎演目案内


シリアスなお話の通し上演だけに、見応えは十分。見終わったとき、どっと疲れを感じる緊迫感でした。

この演目がかかる際には“「飯炊き」の場面をやるのか、省略するのか”が問題になるそうですが、今回は、坂東玉三郎さんの熱演のもと、ばっちり上演されていましたよ。

(乳人(めのと)政岡と子役2人だけで長い時間を保たせないといけないこと、また、茶道具を扱う場面があることから、女形の役の中でも演じるのが大変な役どころなんだそうです。)



今月は「秀山祭」という、初代吉右衛門さんを偲ぶ企画です。ということで、中心になるのはやはり、初代吉右衛門さんの実孫で養子の、人間国宝 二代目 中村吉右衛門さんです。

この演目では、実悪(お家乗っ取りなど大きな悪事を企む悪者)の仁木弾正を演じていらっしゃいます。

妖術で鼠に化け、悪事の証拠の連判状を取り返した後の場面「床下」では、白塗りに燕手と呼ばれる鬘。不気味な恐ろしさを発揮していらっしゃいました。

取った席が悪くて(3階の東)、「対決」の場面では仁木弾正がほとんど見えなくて残念でした(^^;;

(これからご観劇の方は、3階西寄りの花道の見えないあたりや、舞台上手の演技が見えない3階東を避けていただくのが得策かと。)

代わりに「対決」の場面で印象に残ったのが、中村歌六さん。ついさっき、平然と子どもを殺す悪女 八汐を演じていらしたのに、「対決」では、藩を懸命に支える、人の善い老臣を演じるわけですから、歌舞伎役者というのは恐ろしい。

今月はあと、赤坂大歌舞伎と歌舞伎座 昼の部を見にまいります。坂東巳之助さんもいらっしゃる、坂東会にもお邪魔します。楽しみ!

 

二代目 聞き書き 中村吉右衛門

二代目 聞き書き 中村吉右衛門