懸想文

国語講師 吉田裕子のエッセイ、歌舞伎観劇メモ、古典作品や長唄・端唄の現代語訳など

4「春はただわが宿にのみ梅咲かばかれにし人も見にと来なまし」(和泉式部集)

和泉式部集』4番

春はただわが宿にのみ梅咲かばかれにし人も見にと来なまし


(はるはただわがやどにのみうめさかばかれにしひともみにときなまし)

  • 宿 ー 家の歌語
  • かれにし ー 「離れにし」と「枯れにし」の掛詞。訳す上では「離れにし」の意で、「梅」と「枯れ」が縁語と言えよう。
  • 来なまし ー カ変+強意の助動詞+反実仮想の助動詞。「咲かば」の仮定は所詮ありえないこと。叶わない願望的な空想であることを示す。

春に梅の花が咲くのが、わたくしの家にだけだとしたら、訪れの途絶えたあの方も、その梅を見に、ということで、わたくしのもとを訪ねてくださるでしょうにね。