安田靫彦展@東京国立近代美術館
16歳で描いたという「静訣別之図」。静御前の表情がとても好きでした。シンプルな線を重んじ、仏教絵画のような表情の人物を好んだ彼ですが、若い頃は写実的な画風なので、表情が印象に残ります。
それは、廃物派の物部守屋の厳しい眼光を描いた「守屋大連」も同じく。(本人はのちに、あの作品は写実的過ぎる、と悔いたようですが。)
テレビで目にしたときから虜だった「夢殿」を見られて幸せでした。女性たちの、非日常的な上品な美しさもさることながら、瞑想する聖徳太子のすっきりと美しいたたずまい。あの、繊細なまつげの感じを間近で見られたのは僥倖でした。
「松風」「小野小町」の髪の毛といい、安田靫彦さんの、繊細な描線の美しさ!
そして、「羅浮仙」の背景などで見かけた、梅の描き方も忘れられません。彼の梅を見ていると、梅に、中国らしい風情をしみじみと。(鑑賞する植物としての梅が日本に広まるのは奈良時代。)
「朝顔」といい、「菖蒲」といい、とにかく植物が素敵なんですよね。特に、「菖蒲」という絵の、葉などは墨で、花の部分だけに色が付いているのも美しかったです。
富士山好きなので、何点かある富士山の絵も嬉しく鑑賞。
「赤人」の富士はシンプルで、あれだけの表現でも、富士は富士と分かるのだということを改めて思い知りました。
「富士秋霽」も好きでしたが、91歳、入院前の最後の作品「富士朝暾」の金・白・黒の表現が印象に残っています。
図録が売り切れてしまっているので、一生懸命 目に焼き付けた安田靫彦展。私は「夢殿(聖徳太子)」、連れは「出陣の舞(信長)」のクリアファイルを購入。写真は、四階「眺めの良い部屋」から。 pic.twitter.com/Pdg5EWcywL
— 吉田裕子(国語講師・著述業) (@infinity0105) 2016年5月15日