懸想文

国語講師 吉田裕子のエッセイ、歌舞伎観劇メモ、古典作品や長唄・端唄の現代語訳など

23「庭のままゆるゆる生ふる夏草を分けてばかりに来む人もがな」(和泉式部集)

和泉式部集』23番


庭のまま ゆるゆる生ふる 夏草を 分けてばかりに 来む人もがな

 

(にはのままゆるゆるおふるなつくさをわけてばかりにこむひともがな)

 

 

庭のかたちのままに生え広がる夏草。それをかき分けるようにして会いに来るような人がいたらなぁ。

 

 

夏草の生命力と、自分を恋うて逢いに来る男の人の情熱とを対照させるような詠みぶりが面白い和歌です。

 

この夏草は観念的なものではなく、眼前の景であったのではないかと思います。目の前の一つ一つの景物に自身の恋を連想するのが、和泉式部らしさではないでしょうか。