懸想文

国語講師 吉田裕子のエッセイ、歌舞伎観劇メモ、古典作品や長唄・端唄の現代語訳など

40「朝風に今日おどろきて数ふれば一夜のほどに秋は来にけり」(和泉式部集)

和泉式部集』40番

 

朝風に 今日おどろきて 数ふれば 一夜のほどに 秋は来にけり

 

(あさかぜにけふおどろきてかぞふればいちやのほどにあきはきにけり)

 

朝の風の涼しさにはっとして今日、日付を数えてみたところ、一夜のうちに急に秋が来たんだなぁ。

 

 

かつては、現代よりも、暦を通じて季節を味わっていたのでしょう。旧暦では、四月から六月が夏、七月から九月が秋です。風の涼しさにはっとして、日付を確認したところ、九月一日だったというわけです。今でも立秋の頃(八月七日頃)、朝晩の風の涼しさに驚くことがありますね。

 

同じ秋の訪れとしては、藤原敏行の「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる」(古今和歌集)と通じるものを感じます。