懸想文

国語講師 吉田裕子のエッセイ、歌舞伎観劇メモ、古典作品や長唄・端唄の現代語訳など

和泉式部

176「身にしみてあはれなるかないかなりし秋吹く風をよそに聞きけむ」(和泉式部集)

『和泉式部集』176番 身にしみて あはれなるかな いかなりし 秋吹く風を よそに聞きけむ 『続後撰和歌集』恋四、『万代集』秋上に採録。 詞書: ものいみじう思ふ頃、風のいみじう吹くに (ひどく思い悩む頃、風が激しく吹くので) 秋: 「飽き」との掛詞 (し…

40「朝風に今日おどろきて数ふれば一夜のほどに秋は来にけり」(和泉式部集)

『和泉式部集』40番 朝風に 今日おどろきて 数ふれば 一夜のほどに 秋は来にけり (あさかぜにけふおどろきてかぞふればいちやのほどにあきはきにけり) 朝の風の涼しさにはっとして今日、日付を数えてみたところ、一夜のうちに急に秋が来たんだなぁ。 かつて…

23「庭のままゆるゆる生ふる夏草を分けてばかりに来む人もがな」(和泉式部集)

『和泉式部集』23番 庭のまま ゆるゆる生ふる 夏草を 分けてばかりに 来む人もがな (にはのままゆるゆるおふるなつくさをわけてばかりにこむひともがな) 庭のかたちのままに生え広がる夏草。それをかき分けるようにして会いに来るような人がいたらなぁ。 …

『和泉式部集』現代語訳 恋の和歌3首(80-82)

『和泉式部集』「恋」より80「いたづらに身をぞ捨てつる人を思ふ心や深き谷となるらん」(いたづらにみをぞすてつるひとをおもふこころやふかきたにとなるらん)訳「むなしくも、恋に我が身を堕としてしまいました。人を想う心は、深い谷となっているのでしょ…