懸想文

国語講師 吉田裕子のエッセイ、歌舞伎観劇メモ、古典作品や長唄・端唄の現代語訳など

好きな古典和歌3首と自詠3首

第二十二回 文学フリマ東京(2016.5.1 流通センター)に出店してまいりました。明日5/1(日)11時〜は文学フリマ@流通センター。セ-06で出店します。「山月記外伝」「こころ後日談」という二次創作2編を収めた『精選現代文 迷作編』(200円)と、短歌の本『裕…

矛盾に満ちている。だからこそ歌舞伎はおもしろい ―― 私が歌舞伎に惹かれる理由

男女問わず、ミステリアスな人間にはつい惹かれてしまう。謎めいた雰囲気が気になって近付いて行くのだが、近付いたところで、ちっとも分かりはしない。しかし、何とか分かりたくて近付き、手がかりを探す。手がかりを1つ、2つ……とかき集め、少しは分かっ…

花の成田山新勝寺 歌舞伎ゆかりの地であることを感じつつ、成田太鼓祭を満喫!

成田山新勝寺(千葉県成田市、真言宗智山派のお寺)を訪ねました。 平将門の乱(935年)が開山の契機という、実に1000年以上の長い歴史を持つお寺です。荒廃していた時期もあったようですが、江戸時代、江戸での出開帳*1で注目を集めて以降、国内屈指…

明治座 四月花形歌舞伎 昼の部 ~勘九郎&七之助&菊之助のタッグ~ 『葛の葉』『末広がり』『女殺油地獄』

明治座 四月花形歌舞伎の昼の部を観てまいりました。 www.kabuki-bito.jp 七之助さんが哀しくも美しい『葛の葉』(芦屋道満大内鑑 四段目)、 勘九郎さんの愛嬌と舞踊が活きる『末広がり』、 菊之助さんが上方のちょっと三枚目の色男に挑む『女殺油地獄』。 …

月窓寺の「花まつり」 お稚児行列を眺めに行きました

2016年4月3日(日)、吉祥寺の雲洞山 月窓寺*1で、花まつり*2が開催されるということで、覗きに行ってまいりました。 14時過ぎ、花まつりの開催を知らせる、花火の爆音*3が街に鳴り響き、 14時半~ お寺でのセレモニー(灌仏法要) 15時~ サンロード商店街の…

2「春日野は雪ふりつむと見しかども生ひたるものは若菜なりけり」(和泉式部集)

『和泉式部集』2番春日野は雪ふりつむと見しかども生ひたるものは若菜なりけり(かすがのはゆきふりつむとみしかどもおひたるものはわかななりけり)春日野 ー 奈良の春日野のこと。和泉式部が実際に目にした光景とは考えにくい。紀貫之「春日野の若菜摘みに…

4「春はただわが宿にのみ梅咲かばかれにし人も見にと来なまし」(和泉式部集)

『和泉式部集』4番春はただわが宿にのみ梅咲かばかれにし人も見にと来なまし(はるはただわがやどにのみうめさかばかれにしひともみにときなまし)宿 ー 家の歌語かれにし ー 「離れにし」と「枯れにし」の掛詞。訳す上では「離れにし」の意で、「梅」と「枯…

152「偲ぶべき人もなき身はあるうちにあはれあはれと言ひや置かまし」(和泉式部集)

『和泉式部集』152番世の中はかなかきこと聞きて偲ぶべき人もなき身はあるうちにあはれあはれと言ひや置かまし(しのぶべきひともなきみはあるうちにあはれあはれといひやおかまし)死んだって、偲んでくれそうな人もいないわたくしですから、生きているうち…

162「ともかくも言はばなべてになりぬべし音に泣きてこそ見せまほしけれ」(和泉式部集)

『和泉式部集』162番 歎くことありと聞きて、人の「いかなることぞ」と問ひたるに ともかくも言はばなべてになりぬべし音に泣きてこそ見せまほしけれ (ともかくもいはばなべてになりぬべしねになきてこそみせまほしけれ) なべてに ― 平凡に、普通に ぬべし…

161「立ちのぼる煙につけて思ふかないつまた我を人のかく見む」(和泉式部集)

『和泉式部集』161番 また、人の葬送するを見て 「立ちのぼる煙につけて思ふかないつまた我を人のかく見む」 (たちのぼるけぶりにつけておもふかないつまたわれをひとのかくみむ) ~につけて ― ~があると、それに関連して 煙 ― 火葬の煙のことと思われる…

尾上菊五郎さんの秀吉挑戦が評判の『新書太閤記』 二月 歌舞伎座 昼の部の感想

尾上菊五郎さんの羽柴秀吉(藤吉郎)、中村梅玉さんの織田信長、中村吉右衛門さんの明智光秀など、豪華な顔合わせで、秀吉の出世物語を描く『新書太閤記』(歌舞伎座の二月大歌舞伎、昼の部)を見てまいりました。 「秀吉の出世物語の良いとこ取りで、劇的な…

78「かづけどもみるめは風もたまらねば寒きにわぶる冬のあま人」(和泉式部集)

『和泉式部集』78番 「かづけどもみるめは風もたまらねば寒きにわぶる冬のあま人」 (かづけどもみるめはかぜもたまらねばさむきにわぶるふゆのあまびと) かづくー「潜く」(海にもぐる)と「被く」(褒美などとして物をいただく)の掛詞 みるめー「海松布…

77「せこが来て臥ししかたはら寒き夜はわが手枕を我ぞしてぬる」(和泉式部集)

『和泉式部集』77番「せこが来て臥ししかたはら寒き夜はわが手枕を我ぞして寝る」(せこがきてふししかたはらさむきよはわがたまくらをわれぞしてぬる)あの人が来て、泊まっているというのに、寒々しい思いをさせられる夜には、自分の腕を枕にして眠るので…

大阪松竹座 夜の部は愛之助さん・壱太郎さん・中車さんが奮闘!(2016年1月壽初春大歌舞伎の感想)

大阪松竹座は、昼の部も夜の部も出し物がバラエティに富んでいて、飽きずに見ることのできる楽しい時間でした。夜の部は「桂川連理柵 帯屋」「研辰の討たれ」「芝浜革財布」。 「桂川連理柵 帯屋」は、こちらのインタビューで壱太郎さんがおっしゃっているよ…

大阪松竹座 昼の部は多彩で楽しい出し物(2016年1月壽初春大歌舞伎の感想)

2016年の初芝居は、大阪松竹座にいたしました。 www.kabuki-bito.jp 三重の実家から駆け付けたので、鏡開きには間に合わなかったのですが、初日記念のステッカーをいただいたり、艶やかなお着物のお客様の多い中で過ごしたりすることで、お正月芝居の華やか…

76「下もゆる雪まの草のめづらしくわが思ふ人にあひみてしがな」(和泉式部集)

『和泉式部集』76番 「下もゆる雪まの草のめづらしくわが思ふ人にあひみてしがな」 (したもゆるゆきまのくさのめづらしくわがおもふひとにあひみてしがな) 掛詞:芽―めづらしく 序詞:「下もゆる雪まの草の」が「めづらしく」を引き出している 雪の下に生…

2015年の舞台(歌舞伎・狂言)で印象に残ったもの 10選

2015年は、本当に、舞台(主に歌舞伎)をよく観に行きました。どれだけ観に行ったのか、数えるのが恐ろしいくらい……(とはいえ、歌舞伎がお好きな方の中にはもっともっと行っていらっしゃる方も多いかと思いますが。) 歌舞伎座や新橋演舞場などの公演に加え…

2015年、特に素敵だと思った本・音楽

◆2015年に特に素敵だと思った本 何かしらの機会があって人に教えた作品が印象に残っています。 例えば、学校で、高2現代文を担当しておりました。その授業の中で読んだ『こころ』『「である」ことと「する」こと』などは何度も読み込みましたが、そのたびに…

2015年に好きになった和歌・短歌・俳句・自由律俳句

今年知ったり、今年その魅力を再発見したりした詩歌たち。 2015年は、カルチャースクールなどで歌集を講義する機会が多く、たくさん好きな作品に出会いました。たくさん紹介したいところなのですが、残念ながら、手もとに古典文学全集がなく……。twitterや手…

吉井武道館 2015セットリスト(吉井和哉 @日本武道館「Beginning & The End」2015.12.28 セトリ)

吉井和哉の年末恒例 日本武道館公演に行ってまいりましたので、備忘録がてらにセットリストを投稿しておきます。 ◆◆吉井武道館 本編◆◆ 恋の花 PHOENIX I WANT YOU I NEED YOU (MC) 欲望 SIDE BY SIDE CALL ME (MC) BLOWN UP CHILDREN 朝日楼 シュレッダー TA…

12/20(日)-12/26(土)の1週間で読んだ本

高校生のとき読んでいた参考書を読み返して驚いたのが、13年も経った今も、よく、読んだときの感覚を覚えているということ。あのころに繰り返して読んだものは、「覚えよう!」「覚えなくては!」という意識とは別に、頭と心に染み込んでいるのだなぁ、と。…

俊寛(歌舞伎 近松門左衛門『平家女護島』より) 見どころ、あらすじなど

「平家女護島」の二段目「俊寛」は、鹿ケ谷での平家打倒の企てが露見し、鬼界ヶ島に流された流人たちを描いた作品です。三人の流人の内、俊寛一人が島に残される、その悲劇が作品の主眼です。『平家物語』や能の「俊寛」をもとに書かれた、近松門左衛門によ…

12/13(日)-12/19(土)の1週間で読んだ本

学校の授業で読んだ『こころ』。その後日談を書いてみたいなぁと思い立ち、改めて『こころ』を読み返しておりました。 (書き上がりましたので、来年の文学フリマに持って行こうかと思っております^^) 教えるという機会を持つことで、ひとつの作品とじっ…

12/6(日)-12/12(土)の1週間で読んだ本

吉祥寺 古典を読む会の準備に追われた一週間。 メンバーの一人に、古典和歌に造詣が深い方がいらっしゃるので、「その方の前で不用意なことは言えない」だとか、「その方にも一つでも新鮮な発見があったと思ってもらいたい」だとかいう思いがあって、必死に…

11/29(日)-12/5(土)の1週間に読んだ本

今週は、充実した雑誌や図録、筋書きに胸をときめかせた1週間でした。『家庭画報』や『婦人画報』『和楽』『演劇界』の新年号のおめでたさ。 講談社野間記念館の図録に、講談社創業者の野間さんの、以下の言葉が載っておりました。 雑誌の本領は、雑なるにあ…

八代目中村芝翫 襲名披露(現:中村橋之助)記者会見の文字起こし(衛星劇場放送内容の全文)

中村橋之助さんが2016年10月、八代目中村芝翫を襲名されるということで、9月28日、コートヤード・マリオット銀座東武ホテルで記者会見が開かれました。 www.kabuki-bito.jp その模様は各媒体の記事で紹介されましたが、その映像(挨拶を全部、質疑応答1つ)…

11/22(日)-11/28(土)の1週間に読んだ本

文学フリマに向けて自作短歌を整理したり、とある公募に向けて文章をまとめたり、新古今和歌集と格闘したりしていた一週間でした。井上ひさしさんの遺志を継ぎ、山田洋次さんが書き、森本千絵さんが描いた絵本。20日発売のこの本、読みたいと思っていたら、…

11/15(日)-11/21(土)の1週間で読んだ本

本を読むと、手帳にメモを取ることが多いのですが、今週はたまたまその写真を上げている本がふたつ。字が汚くてお恥ずかしい限りですが(^^;; SWITCHでの対談が面白かった山極寿一先生の本。「勉強法」という書名には違和感。「生き方」の本として読む分には…

11/8(日)-11/14(土)の1週間で読んだ本

8日の日曜日、平泉(岩手県)に旅行に出かけました。あいにくの雨でしたが、貴重なものをたくさん見ることができました! その興奮さめやらず購入した図録が、今週の読書始めです。 また、今週は主宰勉強会「吉祥寺 古典を読む会」がありました。テーマは「…

11/1(日)-11/7(土)の1週間で読んだ本

学校の授業で『こころ』(夏目漱石)を扱うため、『こころ』関係の本をたくさん読んでいます。教えるとき、授業というはっきりした〆切がある分、集中的にいろいろ読むことができるので、楽しいですね♪ いろいろな解釈のできる『こころ』。授業が終わるころま…