坂東玉三郎丈「歌舞伎の間口を広げようと思ったことはない」――『演劇界』(2015年9月号)インタビューより
今月号は、巻頭に、坂東玉三郎さんのインタビュー(聞き手は、TBSアナウンサー 安東弘樹さん)。
65歳になられてもなお、匂い立つ美しさの玉三郎さん。彼が「与話情浮世横櫛」で、ヒロインお富をつとめた七月大歌舞伎 昼の部は、あっという間に売り切れてしまう大盛況でした。コアな歌舞伎ファンに支持されていることはもちろん、「玉三郎さんが出るなら観に行ってみようかな」という人が多くいることがよく分かります。
そんな、ファンの多い玉三郎さんが、「歌舞伎の間口を広げる」ということについてどう考えているか、という問いに答えたくだりが、とても好きです。
私、ざっくばらんに言ってしまうと、間口を広げようと思ったことはあまりなくて、自分の好きなことだけをやってきた人間なんですね。また現実問題として、少子化と高齢化でこれから演劇人口が激減していくのは避けられないことで、そのなかで間口を広げるというのは正直難しい気がします。
それより、平たい言葉だけど、ひとつずつ質のいいものをつくっていくことがいちばん大事なのではないかなと思います。
七月の玉三郎さんは、市川中車(香川照之)さんや市川海老蔵さんと組んでいましたが、そうして、下の世代と組んで、ひとつひとつよい舞台をつくっていくことが、自分にできる貢献だという風にお話しされていました。
ちなみに、よいものをつくるにはどうしたらよいか、ということに関しては……
やっぱり、つくる側も感動ということを理解してつくらなきゃならないと思います。上手い下手というのは、それなりなんですよ。それ以前に、いろんなものに感動して、そういうものをつくりたい、やりたいという思いが強ければ、必ずいいものができると思う。
自慢になってしまうだけれど、私、十代や二十代の頃は本当に多感だったんです(笑)。また映画の話になりますけれど、たとえば『風と共に去りぬ』を見たら一週間くらいボーっとして、役者のことを調べまくるわけ。
受け手として、よいものを見聞きすることが、作り手として、よいものをつくる第一歩なのですね。
玉三郎さんの次は、九月の歌舞伎座「伽羅先代萩」。こちらも楽しみです。
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