懸想文

国語講師 吉田裕子のエッセイ、歌舞伎観劇メモ、古典作品や長唄・端唄の現代語訳など

大阪松竹座 夜の部は愛之助さん・壱太郎さん・中車さんが奮闘!(2016年1月壽初春大歌舞伎の感想)

 
大阪松竹座は、昼の部も夜の部も出し物がバラエティに富んでいて、飽きずに見ることのできる楽しい時間でした。夜の部は「桂川連理柵 帯屋」「研辰の討たれ」「芝浜革財布」。
 
 
f:id:infinity0105:20160102215326j:image
 
桂川連理柵 帯屋」は、こちらのインタビューで壱太郎さんがおっしゃっているように、ちょっと予習しておいた方が見やすそうなお芝居。
 
 
その中村壱太郎さんが、道化役の長吉と、みずみずしいお半、二役で奮闘するお芝居。昼の部で、絶間姫の美貌にうっとりした後だけに、鼻垂れ丁稚の壱太郎さんは衝撃でした(笑)

私は個人的に、主人公の長右衛門のいちいちが全く理解できない(十五年前の心中未遂と言い、石部の宿での一夜の契りのことと言い、終盤の気持ちの流れと言い)ので、全然長右衛門に肩入れできないのですが、冒頭、竹三郎さん演じる義母 おとせと、愛之助さん演じる弟 儀兵衛がめちゃくちゃ嫌なやつなので、ちょっとだけ同情を引き出される、という(笑)

個人的には、このお芝居の愛之助さんの演技は大好きです。

このお芝居、本当は坂田藤十郎さんの長右衛門こそ見どころなのだろうけど、3階席だと、耳の悪い私には、あまりセリフが聞き取れなくて、ちょっと残念でした……。
 
 
f:id:infinity0105:20160102215329j:image

「研辰の討たれ」はとにかく、愛之助さん! この、ちょっと間の抜けたお写真をご覧ください。情けない侍 辰次、超 熱演でございます。面白かったですねぇ。今月の愛之助さん(昼・夜とタイプの違う四役でご活躍)、本当に大好きです。

なお、嵐橘三郎さんの家老や、市川笑也さんの奥方の貫禄も素敵でした。彼らが堂々としているからこそ、研辰の情けない阿諛追従ぶりが際立つわけです。特に、笑也さんの奥方、大好きでした。

この演目は、敵討ちに出る九一郎・才次郎の苦労ぶりも面白いのだけど、中車さんの九一郎の真面目でお硬くて要領の悪そうな感じも、壱太郎さんの才次郎の爽やかな一本気ながらも空回りしてしまう感じも、よくお似合いでございました。

そして、第三幕の無責任な群衆たち! 彼らの役割は大きいですね。
 
 
f:id:infinity0105:20160102215334j:image

芝浜革財布。獅子舞も登場し、お正月にぴったりの良いお芝居でございました。(厳密には、年末の方が良いのかもしれないけれど……) 仕事始めを前に、「今年も一年頑張って働こう」と思えるお話でしたね。

「ぢいさんばあさん」で共演を重ねている、中車さんと扇雀さん。今回も、夫婦ぶりは息ぴったり。

なお、大阪松竹座、全部見終わってからでも、東京に戻れる時間帯なのが有難かったです。頑張れば21:10、ゆっくりでも21:23の新大阪発に乗れますよ〜。