懸想文

国語講師 吉田裕子のエッセイ、歌舞伎観劇メモ、古典作品や長唄・端唄の現代語訳など

78「かづけどもみるめは風もたまらねば寒きにわぶる冬のあま人」(和泉式部集)

和泉式部集』78番

「かづけどもみるめは風もたまらねば寒きにわぶる冬のあま人」

 
(かづけどもみるめはかぜもたまらねばさむきにわぶるふゆのあまびと)
 
  • かづくー「潜く」(海にもぐる)と「被く」(褒美などとして物をいただく)の掛詞
  • みるめー「海松布」(食用の海藻)と「見る目」(男女の逢う機会)の掛詞として使われることが多い。この歌はそう取って恋のイメージを重ねるべきか、「かづく」の言葉遊びの妙を楽しむ歌に留めるべきか、悩ましいところである。(後者として訳してある)
 
海に潜っても(=かづいても)、そうして取る水松布は、下賜される(=かづく)着物とは違って、風を防ぐこともありませんので、寒さを辛く思う、冬の海女です。