懸想文

国語講師 吉田裕子のエッセイ、歌舞伎観劇メモ、古典作品や長唄・端唄の現代語訳など

162「ともかくも言はばなべてになりぬべし音に泣きてこそ見せまほしけれ」(和泉式部集)

和泉式部集』162番

歎くことありと聞きて、人の「いかなることぞ」と問ひたるに

ともかくも言はばなべてになりぬべし音に泣きてこそ見せまほしけれ

(ともかくもいはばなべてになりぬべしねになきてこそみせまほしけれ)

 

  • なべてに ― 平凡に、普通に
  • ぬべし ― 強意「ぬ」+推量「べし」。きっと~に違いない。
  • 言はばなべてになりぬべし ― 後に藤原俊成が「恋しとも言はばなべてになりぬべし心を見する言の葉もがな」(『長秋詠藻』)という歌を詠んでいる。

 

何と言うにしても、言葉ではきっと平凡なものになってしまいますわ。言葉では追いつかないこの悲しみ、声を上げて泣いて、あなたにお見せしたいものです。