懸想文

国語講師 吉田裕子のエッセイ、歌舞伎観劇メモ、古典作品や長唄・端唄の現代語訳など

片岡秀太郎さん 上方歌舞伎にかける思い『上方のをんな:女方の歌舞伎譚(しばいばなし)』

 

上方のをんな: 女方の歌舞伎譚

上方のをんな: 女方の歌舞伎譚

 

 

関西歌舞伎の低迷期の苦労話(今の片岡仁左衛門さんと、「歌舞伎がやりたい」と泣いた話など)から、「上方歌舞伎塾」や「平成若衆歌舞伎」などの取り組み、後進育成にかける思いなどを語っていらっしゃいます。

 

読んでいて涙が出てきそうになる一冊なのですが、これは、ご本人のお人柄はもちろん、聞き書きご担当の坂東亜矢子さんの腕前によるところもあるのでしょう。ありがたいお仕事です。

 

「昔から関西の歌舞伎界は、実力主義といわれてきました。逆に、江戸は血統主義と申しますか、御曹司に大きな役をどんどん演らせて、いい役者に育てていくという継承の仕方ですね」

 

「関西では今も、実力主義の気風が残っているんですよ。息子の愛之助が、座頭をさせていただいている『永楽館大歌舞伎』の昨年のチラシを見ていて、『上方やなぁ』と思いました。生まれながらの御曹司は、中村壱太郎くんだけ。上方は、血でなく芸でつながっているんですよ。」

 

 

三代狂言女方、また、上方らしい演目の女方について語るページも充実しています!

 

四谷怪談を少し特別なスタイルで。【歌舞伎音楽家達による「四谷怪談」】@劇酒場 忠臣蔵

f:id:infinity0105:20160817212213j:image

 

本日は、【歌舞伎音楽家達による「四谷怪談」】という企画にお邪魔してきました。

 

四谷怪談のお岩さんの人間ドラマの部分(死んで幽霊になる前の部分)を、ググッと1時間ほどにまとめての上演。

 

三味線は杵屋五七郎さん、唄は和歌山富朗さん。ベテランのおふたりの演奏(なんと、富朗さんはお岩さんも熱演!)と、「劇酒場 忠臣蔵」の店主で俳優の松元さんや、俳優の三木さんの演技が加わっての熱演でした。

 

杵屋栄之丞先生による作品解説も絶妙な塩梅で、単にあらすじを追うダイジェストといった感じではなく、ひとつの作品として楽しめる作りになっておりました。

 

伊右衛門や伊藤家に裏切られ、切迫してゆく。そんな、お岩さんの悲痛な境遇や心境を、黒御簾音楽とともに、見事に切り出して見せていただきました。

 

鶴屋南北の本、三味線音楽、役者のお芝居。それぞれの力をしみじみ感じた時間でした。

  劇酒場『忠臣蔵』 - 基本データ | Facebook

 

f:id:infinity0105:20160817213246j:image

 

松元 信太朗 - 昨晩の「四ッ谷怪談」の動画の一部です! 貴重な経験をさせて頂き嬉しい限りです!... | Facebook

尾上右近さん「研の會」2016年8月6日 仮名手本忠臣蔵・船弁慶

f:id:infinity0105:20160807182652j:image
 

尾上右近さんの勉強会「研の會」、初日を観に行きました。

 

仮名手本忠臣蔵」の五段目・六段目を見るのは、尾上松也さんが勘平に挑戦した新春浅草歌舞伎(2015年)以来。

 

あのとき、斧定九郎を見て、坂東巳之助さんに一目惚れしたのでした。なんと、今日の斧定九郎はなんと市川染五郎さん……! ごちそうですねぇ。色気のある悪役、とてもお似合いでした。

 

この作品で勘平を演じた尾上右近さんの名演はもちろんなのですが、右近さんの三つのお役の中で一番印象に残ったのは、船弁慶平知盛でした!

 

七月の歌舞伎座で、色気むんむんの織姫様とおさめさんを見せてくれた翌月に、あんな、気魄に満ちた平知盛を見せてくださるのだから、歌舞伎役者というものの振り幅よ!

 

最後、幕外での笛や締太鼓と真剣勝負をするかのような時間、濃密でした。その前の、染五郎さんの弁慶との戦いの緊迫感もまた良かったです。

 

こうした大役を演じながら、公演全体のプロデュースも(とっても忙しい本公演の合間に)やってしまうのだから、尾上右近さん(24歳!)はすごいなー、と。

 

なお、パンフレットには、昨年の舞台写真に、今回のこしらえでのスチール写真、さらには、尾上右近さん・中村米吉さん・中村種之助さんの楽しそうな座談会記事4ページ。

 

最終ページには、来年の研の會が、8/27・8/28に開催される旨の告知が! また一回り大きくなったけんけんの勇姿が楽しみですねぇ。

 

あと、ミーハーな若手役者ファンとしては忘れられない光景が、幕間の物販。

 

仮名手本忠臣蔵』で、可憐なお軽をつとめ終えた中村米吉さんが、物販にお立ちになっていました。呼び込みも、おすすめも、お上手……! お買い上げのお客さんと記念撮影もなさっていました。

(わたくしは、大の米吉さん贔屓なのですが、逆に、勇気が出なくてダメでした(笑))

 

 

 

 

◆◆追記

 

2日目の物販には、最近はドラマ収録でお忙しい中村隼人さんも駆けつけたそう……! この20代軍団が40歳前後になる頃が本当に楽しみです。

 

 

◆◆皆様のご感想

『第二回 研の會』尾上右近 自主公演 感想まとめ - Togetterまとめ