懸想文

国語講師 吉田裕子のエッセイ、歌舞伎観劇メモ、古典作品や長唄・端唄の現代語訳など

2016-02-01から1ヶ月間の記事一覧

2「春日野は雪ふりつむと見しかども生ひたるものは若菜なりけり」(和泉式部集)

『和泉式部集』2番春日野は雪ふりつむと見しかども生ひたるものは若菜なりけり(かすがのはゆきふりつむとみしかどもおひたるものはわかななりけり)春日野 ー 奈良の春日野のこと。和泉式部が実際に目にした光景とは考えにくい。紀貫之「春日野の若菜摘みに…

4「春はただわが宿にのみ梅咲かばかれにし人も見にと来なまし」(和泉式部集)

『和泉式部集』4番春はただわが宿にのみ梅咲かばかれにし人も見にと来なまし(はるはただわがやどにのみうめさかばかれにしひともみにときなまし)宿 ー 家の歌語かれにし ー 「離れにし」と「枯れにし」の掛詞。訳す上では「離れにし」の意で、「梅」と「枯…

152「偲ぶべき人もなき身はあるうちにあはれあはれと言ひや置かまし」(和泉式部集)

『和泉式部集』152番世の中はかなかきこと聞きて偲ぶべき人もなき身はあるうちにあはれあはれと言ひや置かまし(しのぶべきひともなきみはあるうちにあはれあはれといひやおかまし)死んだって、偲んでくれそうな人もいないわたくしですから、生きているうち…

162「ともかくも言はばなべてになりぬべし音に泣きてこそ見せまほしけれ」(和泉式部集)

『和泉式部集』162番 歎くことありと聞きて、人の「いかなることぞ」と問ひたるに ともかくも言はばなべてになりぬべし音に泣きてこそ見せまほしけれ (ともかくもいはばなべてになりぬべしねになきてこそみせまほしけれ) なべてに ― 平凡に、普通に ぬべし…

161「立ちのぼる煙につけて思ふかないつまた我を人のかく見む」(和泉式部集)

『和泉式部集』161番 また、人の葬送するを見て 「立ちのぼる煙につけて思ふかないつまた我を人のかく見む」 (たちのぼるけぶりにつけておもふかないつまたわれをひとのかくみむ) ~につけて ― ~があると、それに関連して 煙 ― 火葬の煙のことと思われる…

尾上菊五郎さんの秀吉挑戦が評判の『新書太閤記』 二月 歌舞伎座 昼の部の感想

尾上菊五郎さんの羽柴秀吉(藤吉郎)、中村梅玉さんの織田信長、中村吉右衛門さんの明智光秀など、豪華な顔合わせで、秀吉の出世物語を描く『新書太閤記』(歌舞伎座の二月大歌舞伎、昼の部)を見てまいりました。 「秀吉の出世物語の良いとこ取りで、劇的な…