懸想文

国語講師 吉田裕子のエッセイ、歌舞伎観劇メモ、古典作品や長唄・端唄の現代語訳など

仮名手本忠臣蔵 六段目、勘平の最期に直面した、お軽の母の嘆き

尾上右近さんの勉強会「研の會」を観に行きます♪

仮名手本忠臣蔵の五段目・六段目に挑戦されるということで、手元にあった古典文学全集の浄瑠璃集を読み返しておりました。(歌舞伎と浄瑠璃では多少(?)、違ってはいるのですが……)


浄瑠璃集 新編日本古典文学全集 (77)

浄瑠璃集 新編日本古典文学全集 (77)



歌舞伎だと、勘平の潔い最期で幕が引かれますが、浄瑠璃にある、その後のお軽の母の嘆くシーンがあまりにいたましく、印象に残ったので、現代仮名遣いに改めた上で打ち込んでみました。

「ヤアもう婿殿は死なしゃったか。さてもさても、世の中におれがような因果な者がまたとあろうか。親仁殿は死なしゃる。頼みに思う婿を先立て。いとし、かわいの娘には、生き別れ。年寄ったこの母が、一人残ってこれがマァ。なんと生きていらりょうぞ。コレ親仁殿与市兵衛殿、おれも一所に連れて行て下され」
と、取りついては泣き叫び、また立ち上がって、
「コレ婿殿、母もともに」
と縋りついては伏し沈み、あちらでは泣き、こちらでは泣き、わっとばかりにどうど伏し、声をはかりに嘆きしは、目も当てられぬ次第なり。